AKB48指原莉乃と30代漫画家志望者に、タイムマシンは要らない
タイムマシンが欲しいかい?
そう聞かれてイエスと答えない人類が何人いるだろうか。
「あの時あんな選択をしなければ...」
「あの失敗をやり直せれば...」
この記事を読んでいるあなたも過去の過ちを悔やんだことは一度や二度ではないだろう。我々人類は愚かにも失敗しないと学ばないという習性がある。人生は失敗したら取り返しのつかないのに何と理不尽な事だろう。タイムマシンは全人類の必須アイテムなのだ。
ところがしかし。
この世にはタイムマシンを必要としない人間が2人だけいる。
1人はAKB48指原莉乃。
もう1人は30代漫画家志望者だ。
これより語るは惨劇と喜劇と絶望と希望の物語だ。
AKB48指原莉乃
彼女の説明は不要だろう。言わずと知れたAKBグループの人気トップだ。
彼女は数年前に恋愛スキャンダルを犯した。ファンの男性と恋愛をしており、別れた後、当人の男性から新聞社に暴露されたのだ。
その結果ファンから袋叩きにあい、制裁としてAKB48から地方の姉妹グループへの左遷された。
当時の彼女は後悔したことだろう。
「あんな男と付き合わなければ・・・」あるいは「もっと上手く隠せれば・・・」と。
どちらの後悔だったか私には知る由もない。
人は生きる限り常に選択を迫られる。
選択の都度私たちは最良と思える選択をし続けているはずなのに、なぜか結果は後悔することばかりだ。「なんでこんな事に・・・」と
そして「なんでこんな事に・・・」の最果てにある存在が30代漫画家志望者だ。
30代漫画家志望者を一言で言うなら"人生終わってる人"だ。
夢を抱いて上京し3年...5年...7年...そして10年が過ぎてしまった。同い歳の就職した友達は家庭を持つようになったが、自分は未だにネクタイの結び方も知らない。お金も社会的地位もない。まともな企業への就職などとっくに手遅れ。コンプレックスは肥大の一途。
「漫画家として売れれば!漫画家にさえなれれば全てひっくり返せる!」と自分を鼓舞して、もはや義務感のみで漫画を描いては落選を繰り返す。高校生でもできるバイトで人生を切り売りして生活費を稼ぐ。
完全に終わっている。
終わっているとしか言いようがない。
だがしかし。
もし彼らがタイムマシンに手にしたとして、過去に戻ろうとしたら、私は必死で止めるだろう。
なぜなら
勿体無いからだ。
"人生終わってる30代漫画家志望者"という素晴らしい財産を放棄するなど勿体なさすぎるからだ。
言っている意味がわからないだろう。説明させていただく。
まず厳然たる客観的事実を2つ提示する。
30代漫画家志望者は人生が終わっている。
しかし今の社会には30代漫画家志望者でなくとも、人生が終わってる人がたくさんいる。
ここまではいいだろうか。まだ私が何を言いたいのかわからないだろうが、もう少しだけ聞いて欲しい。
あなたは面白い漫画の重要な要素が”共感”であることをご存知だろうか。
漫画とは、共感ができなければヒットしない。例えば「課長島耕作」を、小学生に読ませてもちっとも面白くないというだろう。それは共感できないからだ。「課長島耕作」がどんなに名作でも、共感できない人にとってはそれは駄作なのだ。
さて、そう考えると・・・うっすらと見えてくるのではないだろうか。
30代漫画家志望者の武器が。
30代漫画家志望者は人生が終わっている。いつまでも報われない苦しみや悲しみ、。成功者への嫉妬や憎悪。そう言った苦痛を骨の髄まで味わっている。
だからこそ。
人生終わっているからこそ、人生終わっている読者に刺さる漫画が描ける。
現代社会ではニートや引きこもりが増加の一途をたどっている。ブラック企業や非正規雇用者の割合も年々増加し、貧困層と富裕層との格差は広がるばかりだ。明日が見えず希望を持てなず毎日消耗している人はいくらでもいる。
つまりターゲットになる読者層はものすごく分厚いのだ。
そう。
人生が終わっていることこそが、30代漫画家志望者の財産であり、最強の武器なのだ。
さて。
ここで指原莉乃さんの話に戻ろう。
指原さんはスキャンダルを起こし知名度が爆発した。そしてHKT48に移籍した後、リーダーとしてチームを引っ張っていく姿がファンの間で大きく評価されたそうだ。
その結果、AKB総選挙2連覇である。
これはAKB史上唯一指原さんだけが成し遂げた栄光である。
彼女の現在の活躍ぶりは、あなたがAKBに興味がなくともご存知だろう。
もしあのスキャンダルがなければ。移籍がなければ。今の栄光も成功もなかっただろう。
どうしてもやり直したい過去がある。
だけどどうしてもやり直せなかった。
だからこそ今の成功がある。
そう。
だから。
だから要らないのだ。
指原莉乃と30代漫画家志望者に、タイムマシンは要らないのだ。